2019.06.30 12:36障害児の母Jさん(覚醒・至高体験) これは、安藤治『私を変えた「聖なる体験」 』(春秋社)に収録された事例である。Jさんは、最初の出産で、出産時の脳損傷のため重症の障害をもった娘さんを産んだ。その事実を知った衝撃、そしてその後の生活の想像を絶する苦労。家の中は糞尿にまみれ、すぐに激しいけいれいが起こる娘さん。おむつを洗いながらとめどもなく涙がながれた。「神も仏もない」、「私の人生は終わった」と嘆いた。 やがて彼女はたった一人で「障害者運動」をはじめた。「ハンディーをもつ子供たちをふつうの子たちと同じように」と始められた運動は7年後に2000人もの会員を擁するようになった。 しかし、 やがて彼女は「もっと根本を考えなければいけなかったのに、外側にばかり...
2019.06.09 08:48鈴木秀子氏の臨死体験 鈴木秀子氏は、日本近代文学を専攻する聖心女子大学の教授で、聖心会のシスターでもあり、エニアグラムやゲシュタルト・セラピーその他の心理療法にも豊かな実践経験をもつ。また、文学療法の開発者としても知られる。その著『死にゆく者からの言葉』(文藝春秋社)は、ベストセラーとなって、多くの人々の心に深く静かな感動を与えた。彼女の「臨死体験」は、『死にゆく者からの言葉 (文春文庫) 』でも報告されているが、ここでは、その体験がより詳しく報告されている、同氏の『神は人を何処へ導くのか (知的生きかた文庫) 』から収録する。 その体験をしたとき鈴木氏は、学会に出席するため、友人のいる修道院に泊めてもらっていた。その修道院は、宮家の立派な屋敷を改造した建物...
2019.06.08 11:33ユングの臨死体験 臨死体験者の変化を全体として見ると、その根底には、「自分の周囲のあらゆる人々や生物、事物に心を開き、それらをあるがままに受け入れ、愛し、慈しみ、それらとの一体感を感じるようになる」と表現できるような傾向があるようだ。少なくとも、自分ばかりが可愛くて、自己と世界との間に垣根をめぐらして自分を守っているのとは逆の方向に、多くの臨死体験者は変化している。一言でいえば、臨死体験者には自己への囚われから自由になっていく傾向があるらしい。 臨死体験者のさまざまな意識変化の謎は、「自己」への囚われからの解放という視点から説明すると、かなり納得できるように思う。以上のことを確認するために、ここではフロイトとならんで潜在意識の偉大な探求者であったC.G.ユングの例を考...